
日に日に酷くなっていく、上階からの騒音。
その実態を探るべく、夜分遅くにお隣へ話を聞きに行った我々2人。
先住人である1-2号室の旦那さんは、
思いのほかあっさりと、この問題について話してくれました。
▼「あぁ、うちにも聞こえてますよ。」

1-2号室の彼は、少し呆れたような、面倒くさそうな口調でそう答えました。
―――やはり。
この音は隣にも聞こえている。
つまり…。
私たちの気のせいではなかったのです。
玄関の奥では、お子さんたちが興味津々といった様子で、こちらのやり取りを覗いています。
なんだか申し訳ない、こんな時間に押しかけて……。
私は思い切って尋ねました。

私たち、まだ引っ越してきたばかりなので分からないんですが、この音って……以前からずっと聞こえてきてます?
すると旦那さんは、

そうですね。だいぶ前からずっとこうですよ。
なんか上の部屋のどっちか分からないけど……おじいさん?なのか……なんかいつもドンドンやってますね。
と、煙草の匂いを漂わせながら気だるげに言いました。
▼新情報「上階住人は”おじいさん”?」
―――おじいさん。
それは上階住人なのか?
それとも、斜め上の2-2号室の方なのか?
あの「ベランダ窓事件」の日、逆光の中で見た黒い人影は確実に男性の背格好でした。
ただ、さすがに年齢層までは分からなかった。
つまり、この旦那さんが言う”おじいさん”が、上階住人のことなのかどうか…しかしその可能性もある。
深夜に近い時間で申し訳ないとは思いつつも、せっかく応対してくれた1-2号室のおとっつぁんには、ここぞとばかりに追加で尋ねてみます。
せっかくの機会、私たちは少しでも情報が欲しかったのです。

そうですか……ちなみに今日、1日中バイブ音?みたいな振動音も聞こえてきたんですけど、それもやっぱり…

あぁ、アレね。前から時々ありますよ。今日も鳴ってましたね。
……まじか。やっぱりか。
いよいよ、良くない方の推測が現実味を帯びてきました。
カレも、私に続いて質問を重ねます。

これらの音って、いつぐらいから始まったんですか?
僕たち引っ越してきたばかりだから、直近の様子しか知らなくて……。
すると旦那さんは少し考えてから、

いつからだったかなぁ? 少なくとも去年はもうありましたよ。
それと、たしか大家さんに苦情も何度かいってるっぽいっすね。
とにかく今に始まった話じゃないですよ、コレは。
と、教えてくれました。
ただ、この辺でだんだんと金髪お父さんの話し方に「いや~、もうめんどくせぇ~…」という空気が、色濃く漂い始めてきました。
深夜に、しかも隣人トラブルっぽい話題に、ご家族で巻き込まれるのはそりゃご免だろう。
我々もご免だが。
本当はもっと詳しく聞きたかったのですが、ここらで切り上げることにし、

ありがとうございました。こんな遅くに本当にすみません。おやすみなさい、失礼します…
私たちは何度もお礼を言い、1-2号室をあとにしました―――。
▼判明した4つの事実
とりあえず、大きな収穫はありました。
隣人からの情報をまとめると、状況はおおよそこんな感じです。
① この断続的な打撃音や長時間の振動音は、少なくとも昨年時点から発生している。
② 発生源は2階のどちらかだが、「おじいさん?」という話から、年配男性が関係している可能性がある。
③ 過去に大家さんへ苦情が入っていたらしい。※それにより何らかの対策が行われたかどうかは不明。
④ 去年から騒音があるという情報により、この騒音は私たち1-1号室だけを狙ったものではない。
……新たに分かったこともあれば、新たな謎も増えてしまった。
一連の騒音の元凶は、誰なのか?
何のために、こんなことをしているのか?
理由は分かりません。
ただ、これだけ激しい音を、これだけ長時間続ける。
普通の人なら、まず面倒くさくて途中で嫌になってしまうでしょう。
そもそも自分が疲れてしまうだろうに。
それでも続けるということは、相当な執念を感じずにはいられません 。
私たちはこの日得た情報と引き換えに、この騒音に対してさらに恐怖を募らせるのでした―――。
▼日常化していく騒音と、増え続ける”記録”。
その後も、打撃音や振動音はほぼ毎日のように続きました。
2~3日ほど静かな日もありましたが、それはむしろ例外でした。
騒音のパターンは、おおよそこんな感じです↓(※ 当時の記録を一部掲載します)
初期から3週間分-1024x660.png)
これは入居初日~3週間くらいの騒音記録(といっても記録が間に合った分のみの表なので、これらもあくまでごく一部)ですが、「バイブレーション」という記録が増えている辺りがこの頃です。
平日:朝7~9時、夕方17時~深夜0時頃までランダム発生
土日:朝9時頃~深夜0時頃までランダム発生
上階住人の外出時~帰宅まで、半日以上連続して続く
この物件Aは本来、そこまで他人の生活音が響く建物ではありませんでした。
ですが、この頃から上階住人の足音や物音…通常生活音までもが、日に日に大きくなっていきます。
引っ越し当初は全く聞こえなかった足音。
それがいつしか、
「ドンッ、ドンッ、ドンッ!」 ※足音Ver.
と、踵を叩きつけて聞かせてくるような音に変わっていきました。
「……わざと立てているのか?」と思ってしまうほどです。
だから、嫌でも分かってしまいます。
上階住人が何時に出掛け、いつ帰ってくるのか。
平日のランダムな数日間は家を空けることが多いこと。
土日祝日は基本在宅であること。
知りたくもない情報ばかり、勝手に耳に入ってきます。
ただ、こういった騒音の記録は、この頃にはすでにある程度残すようになっていました。
突発的に発生する打撃音に関しては、録画や録音が間に合わないことも多かったですが、それでも音が鳴り始めた時にはなるべくすぐスマホを構え、音の発生する瞬間を映像に残していました。
さらに頂き物で余らせていたカレンダーやスケジュール帳を利用して、
- 発生日時
- 発生場所(大体の位置)
- 音の種類
- 回数や長さ、音量の大きさ
…など、騒音の詳細が後から思い出せるように、できる限り手書きで記録を取りました。
(※ 実際に記録をつけたノートの写真↓)

こういった騒音の詳細な記録―――つまり証拠を残すことは、住宅トラブルにおいて非常に重要です。
この辺の重要性や、記録の取り方については別記事にてまとめているので、良かったらそちらもぜひご一読ください↓
▼引っ越しから1か月。ついに大家さんへ”苦情”電話
そんな日々が続き―――
引っ越しからちょうど1か月たったその日。
私たちは、ついに大家さんへ正式に苦情を入れることになりました。
朝昼晩、時には深夜でも突然始まる打撃音。
頻繁に1日中鳴り続ける規則的な振動音。
そして日を追うごとに激しくなっていく、それらの騒音。
私たちは早くも、日常生活そのものに危機を感じ始めていました。
いつか本当に、大きなトラブルや事件に発展するかもしれない。
そんな不安が、日に日に大きくなっていったのです。
―――このまま放置しては、いけない。
〈次回予告〉第6話は…

ついに大家さんへ“騒音苦情”!?さらに明らかとなる上階住人事情
「もしもし?あの、物件Aの1-1号室に住む●●です。実は……」
引っ越して、まだわずか1か月。
その短い期間で、私たちは多くの”騒音記録”を残していました。
伝えなければ。大家さんに。
日々、身の危険を感じるほど激化していく騒音に耐えながら、ついに私たちは大家さんへこの事実を話します。
しかし、大家さんの口から帰ってきた言葉は―――。




